肘折


豪雪地の大蔵村出身で昭和8年生まれの人と、
日産ディーラー勤務の2人の合計4人で、

大蔵村肘折温泉奥の大きな砂防ダムのある山々に山菜取りに出かけた。

当日朝1時半に待ち合わせて午前2時に出発、

現地に着いたのは朝もや煙る午前4時半。

真夏にスキーが出来るほどの雪を抱く月山の、

山間にあるそのダムにボートを浮かべて対岸の山に行く。

ボート無しでそこに行くには山々を廻るため、

ゆうに半日はかかるが、我々は15分だ。

7年前に初めて来た頃は、

あまりお目にかからない青ミズナの大群生地を踏みしめて、

やまうどの畑のような斜面に着いた。

久しぶりに訪れた当地は人の歩いた跡があり、

山菜も少なくなっていたが、それでもまだまだ採りきれないほどだ。

ここしばらく雨もないのにダムの湖面は黄色に濁り、

上流で大規模な土砂崩れでもあったようだ。

雪解け水と沢水を満々と蓄えるその中に転覆したらそこで命は無い。

でも我々の誰もダムの中に沈むかも?なんて思いは微塵も無く、

山菜の宝庫に思いを馳せてオールを漕ぐ。

山菜取りに興味の無い人がこれを見れば、こう言うだろう。 

        「アイツらは狂気の沙汰だ」。

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