追突事故

小中学校の同級生で近所に住み、
保険のお客様でもあるS藤君からケータイ電話に、
自動車事故の連絡が入る。

昨日夜の22時頃、彼の母親が飲み屋街で、後方をよく確認せずバックしたところ、
停車中の相手車に軽く追突したらしく、お互いにケガはない模様。

きょうの昼間にS藤君の家に伺い、
彼の母から事故の状況、相手側情報をヒアリングする。
被害者である相手の姓名には、聞き覚えがあり、
間違いなければ背中にイレズミを背負った「幹部サムライ」のはずだ。

「いやな仕事は最優先で」の格言が浮かび、
S藤君の前で被害者に電話するが、留守のようで、呼び出し音のみ続く。
事務所に戻り、保険会社に事故受付表をFAXする。
間もなく背中モンモンの相手の方より、
着信履歴を元に、胸ポケットに入れたケータイに連絡あって、
「今から自宅に来てくれないか」。
「はい、わかりました。加入者がご迷惑お掛けして申し訳ありません。
 今から20分後に伺います」。

見事に手入れされた高い垣根は、大きな家をぐるっと取り囲み、
白い外壁で覆われた車庫は、ゆうゆう3台分もある。
その車庫の脇を通り、コンクリート製の階段を上がると、
新築のような自宅の玄関にインターフォンが据え付けてある。
「内山と申します。遅くなりました」。
低い声で「おー、上がれ」

やはり予想通りサムライさんだった。
昨日の事故なのに、被害車輌の見積もりと写真が用意されている。
金額を横目で確認すると、以外にも適正な見積もりで、
またサムライさんの物腰も紳士的で、
今日のところはいささか安どする。

真夏の暑さと、緊張による冷や汗で、
着ていた半そでのYシャツは、ぐっしょり濡れた。

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