ロードサービス



朝5時ごろチェーンを履いた大型の除雪車は、
家の前の市道をガチャラガチャラと大きな音を立てながら排雪し、
その押し込められた雪は道路脇に、てんこ盛りになる。


家と整備工場前のじゃまな雪を、道路沿いの水の流れるコンクリートの側溝に、


スノーダンプで流し込む。
雪の降る今日の朝は、マイナス5度でやや暖かい。


一月末から昨日までの早朝は、雪は降らない代わりに
指先が痛くなるほど寒く、マイナス10度前後だった。
AM8時にケータイ電話が鳴った。朝早くの着信は、良いことはほとんど無く、
案の定そのとおり。


子供を学校に送る途中で、急いでいたため除雪もままならない農道を走り、


車の右両輪を畑に落として身動き取れないので、なんとかしてくれとの電話。


現場に着き、お客様を自宅に送り、引き上げの段取りをする。


お客様は、保険会社のロードサービスを特約で付保していたため、


本人になりすまして、自動車証券に記載された
フリーダイヤル番号をプッシュする。


右フロントタイヤの半分は、畑の土の中にめり込み、


右側ボデーと地面とのクリアランスはほとんど無く、


ワイヤーウインチによる通常の引き上げでは、右バンパー下部と、


ボデー下部(ロッカーパネル)は破損するので、ミニクレーン付きのトラックが必要と、


受付の男性に車の状況を説明する。


すると「ここは受付のため、技術的な話はロードサービス部門と代わります」
となって、別の担当者と話す。
今度は「クレーンでの作業は、自動車証券のロードサービスの説明書に記されている様に、


有料となります」とおっしゃる。


確かに見てみると、米粒のような字で書いてある。


その保険会社のまた違う部門の人が電話口で、同じことを繰り返す。


紋切り型の説明と、同じ保険会社の3人の方々との、
時間つぶしのような会話に愛想が尽き、
有料だが特殊作業のプロフェッショナル、JAFに連絡する。


雪の多く降った日はJAFの出動も多く、待つこと40分、
装備を満載したミニクレーン付きの2トン車は頼もしげで、
運転してきた隊員に思わず笑顔で手を振る。


クレーンで車体前部を吊り上げ、土に埋まった右フロントタイヤを浮かせ、


そこにアルミ製の脱出用ラダーを敷き、そのまま静かにウインチワイヤーを巻き取る。


慣れた手つきで要した時間は20分、迅速、確実、礼儀正しいの三拍子。


神業のような作業に、「ロードサービスはJAF」と呪文を唱えよう。




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